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モストリー・クラシック誌7月号 東誠三リサイタル評

東誠三はベートーヴェンのピアノ・ソナタをライフワークとしている。 今回のリサイタルは、「ピアニストにとってエベレストに登頂するような大変さを抱く」といわれる後期三大ソナタ(第30番、第31番、第32番)。

    冒頭から緊迫感と集中力に支配されたベートーヴェンが紡ぎ出されるが、けっして力で押す演奏ではなく、ごく自然体。 その響きからは、作品の美しさと偉大さが前面に押し出される。 それゆえひとつのフレーズ、リズム、主題、変奏、フーガなどが聴き手の胸に深く刻み込まれる。 なんという説得力だろうか。

    東誠三の演奏は、いかにベートーヴェンの作品が新しいかを示唆している。3曲のソナタが、いまなお生き生きとした生命力をもって21世紀に生きる私たちにさまざまな語りかけをするからである。 その語りは非常に雄弁であり、革新性を備えている。 私も奏者とともに集中していたため、終演後もずっと脳裏にベートーヴェンの音が居座り、いっこうに消えることはなかった。              伊熊よし子◎音楽評論家

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